かぜおいびとのレクイエム !

かぜおいびと(風老人)・・・昭和29年生まれの68歳、主に昭和で活動し、平成でかすかに花開き、令和ではもうしぼんだ「かぜおいびと」、そんな三世代に生きてきた冴えない男の回想録である。大谷翔平、村上宗隆、錦織圭大坂なおみ、渋野日向子、山口茜、そして、藤井聡太、仲邑菫、藤田怜央、スポーツ界だけに限らす、将棋、囲碁の文化に至るまで、今の時代にスター、天才と言われているのは、平成生まれが主役である。かぜおいびとが少年の頃よく耳にした「明治は遠くになりにけり。」も現代では、「昭和は遠くになりにけり。」王も長島もイチロー谷川浩司羽生善治ももう既に過去の人、平成生まれにとって変わられている。偉大なレジェンド、先人たちを越えた平成生まれの天才児、スーパースター達、それに引き換え昭和にこの世に生を受け もの心つき自分を知り、幼年期、少年期を過ごし成人、就職、結婚、子育て、我を忘れて働くうちに40歳が50歳になりいつの間にか定年、会社から解放されしがらみがなくなった、かぜおいびとはふと思った。日々、毎日毎日、その日その日を夢に向かって精一杯生き、ベストを尽くして歩んできた人生も 過ぎてしまえば「アッ」という間、一体、俺は何をしていたのだろう?  何を生きてきたのだろう? 過去が走馬灯のように脳裏を走りその時々の場面が蘇る・・・。大事な節目、節目の分水嶺の選択に誤りがあったとしか思えない。その行動と結果が今に至っている・・・。退職後に得た有り余る時間の中で振り返った過去があまりにも寂しく何もない惨めな己を知った。あのポイント、ポイントで祖父母、父母の言うとおりの道をこつこつ、こつこつ地道に歩むべきだった。あのポイントに帰りたい。もう一度やり直したい。しかし 時間とは無慈悲なもの過ぎ去りし時間は人間の力ではどうすることもできない。未来、明日は自分で切り開き夢を描き、その夢に向かって邁進することは出来ても 過去はどうすることもできない。過去には勝てない。過去の重い荷物は自分で背負って歩むしか道はない。その想いが突然、弘法大師、お遍路をどこからともなく覚醒した。真に「ふっ」とどこからともなく脳裏に浮かび、平成29年、弘法大師空海に救いを求めて、「同行二人」四国遍路の旅に出た。親不孝、子不幸、孫不幸、友人不幸、先祖から親から受けた愛情に応えていないばかりか周りに次の世代に何ひとつ遺していない己の愚かさ情けなさをこの道中で思い知った。先祖から祖父母から両親から愛情一杯に育てられ数多くのものを引き継ぎながら次の世代に何ひとつ引き継ぐものがない愚かな一生。松明はバトンは次の世代に引き継いでこそ、生まれてきた価値がある。歩んできた人生がある。勝手に自分自身に都合のいい想い違いし有頂天となり自分を見失い、自己満足した己の姿は、「平家にあらざれば人にあらず」「源氏となって栄えんより平家として美しく滅びんかな。」に始まって、{平家は滅んだ。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵におなじ。・・・この平家物語の滅びの美学への憧憬、悪影響が作用したとしか考えられない。} そして、令和元年5月、四国八十八ヶ寺結願、同年6月、高野山に満願御礼参りを済ませ弘法大師空海との旅の第一章を終えました。